森には、地下を流れる水脈があります。空からは雨が降り、地形があり、植生があり、天気が移ろいます。水が湧き、木が育ち、いつのまにか地形さえ変わっていく。
人も、それによく似ています。機械の部品の集まりではなく、常に動き流れている、ひとつの系(システム)です。この森を読むのに、四つの視点を使います。
地と天 方向(価値観・使命)
森は、二つのことから影響を受けます。大地と、空から。
価値観VALUE
あなたから湧き出る
地面の下を流れる、水源です。「これは大事だ」「これは譲れない」と、あなたの内から湧いてくるもの。自分で決めるというより、気づくと湧いている。作り出すものではなく、見つけるもの。森のすべての命の流れです。
使命CALLING
あなたが呼ばれる
「これは、自分が成さねばならない」「やらざるを得ない」と感じる引力です。頭で組み立てるものではなく、気づけば、呼ばれている。"向こう" からやってくる、人生からの電話のようなもの。
そして、この地と天は、循環しています。 源(価値観)から水が湧き、森が育って応え、やがて水蒸気となって還り、また雨になって降り注ぐ。それが森へと染み渡り、また水源から滲み出していく。
水の流れ 動力(好き=want to)
水源から湧いた水は、流れます。この流れが、好き(want to) です。
好きとは、身体がついやってしまう、それ自体が報酬になる行為のこと。結果が出なくても、褒められなくても、「ダメ」と言われても、ついやってしまう、身体が報酬として感じる行動です。やりたくてやっている。森が、森として自然に流れている状態です。
その逆が、have to。義務や恐れや外圧で、流れを止めて、森を外から製材し、規格品を取り出すような力です。同じ強み・同じ傾向でも、水源から湧き出る want to で動けばあなたは充ちていき、have to で動かされればあなたは消耗します。
「好き(want to)」と「価値観(value)」の違い
好きは「ついやってしまう」という、身体の・行動のレベル。価値観は「こうありたい・こうあってほしい」という、信念・判断のレベル。
それは、水源(価値観)と、そこから湧く水流(好き)のようなものです。質は違うけれど、同じ水系でつながっています。
森をどう見るか 視点(内から見るか、外から見るか)
森には、地形と植生があります。これが傾向です。それを、どこからどう見るかによって、言葉が変わります。
傾向TENDENCY
その人の地形・植生そのもの。今、備えている傾向や気質です。先天的なものも、後から育ったものもあります。良いも悪いもない、中立なものです。
得意GOOD AT
森の内側からの眼差し
その地形が自分の中で発揮されて、「自分はこれができる」と手応えを感じるもの。「警戒性が高い」という地形(傾向)から、「リスクを先に察知できる」という手応え(得意)が育っていく。得意は、あなたの一人称で、「できる」という自覚のことです。
需要DEMAND
森の外側からの眼差し
誰かからの求めや依頼、期待。誰かの願いや、悩み事。これはあなたの外側にあります。傾向(地形・素材)が場の需要と、ある文脈で噛み合ったとき、あなたは需要に応えたことになり、感謝や賞賛、承認をされます。そして外から「これは価値だ」と見えてくる。そのとき立ち上がってくるのが、強み です。
「得意」と「強み」の違い
同じ森の同じ性質を、内から見たのが得意(自分が「できる」という自覚)、外から見たのが強み(他者・場が「価値だ」という評価)。視点が違うのです。
だから、両者はズレることがあります。自分では得意と思っていないのに、外から見たら重宝される(森は「水が湧くのが得意」とは思っていないけれど、外から見れば貴重な水源です)。逆に、自分では得意のつもりでも、誰かが求めなければ、強みにはなりません(眺めがいいと思っても、誰も見に来なければ)。
つまり強みは、最初から在る所有物ではなく、関係性の中で立ち上がる現象 です。「あなたの強みは○○です」と固定されると、この「立ち上がる」という出来事の、動き出す感覚が、消えてしまいます。
手入れ 編む働き(選択)
ここまでの層を、自分でどう編むか。それが 選択 です。価値観は湧いてくるもの。使命は呼ばれるもの。好きは身体からやってくるもの。傾向は備わったもの。需要は外側からくるもの。こうして見ると、自分について、選べることばかりではありません。動かせる範囲は、思ったより狭いかもしれない。
でも、そこに「選択」があります。「これは自分で選んだ」と言える状態にしておくこと。流れてくる水を、どの木に引くか。どの地形に手を入れるか。森の手入れにあたる働きです。
図2:地(価値観)と天(使命)が巡り、好き(want to)の水が湧いて森を育て、外からの需要と噛み合うところで「強み」が立ち上がる(森の循環)
図には描いていませんが、この森を外から製材するのが have to、森に手を入れるのが 選択(will) です。
次の章で、さっそく、この見方で、佐藤さんをもう一度見てみます。