——しっかりとした「診断」を、受けるかどうか考えている方へ
診断結果の、
読み方の本
「強み」という袋を、開けてみる。
六つの言葉で、あなたの違和感を、手がかりに変える。
CONTENTS
- OPENこんな方へ / はじめに
- 1すぐに「解決」したら、もったいない
- 2「強み」という袋を、開ける
- 3六つの言葉
- 4さっきの佐藤さんを、この眼鏡で見ると
- 5これ、自分の特性だな。でも、「好き」かな?
- 6使命について、少しだけ
- 7自分一人では、届かないところがある
- 8最後は、あなたの選択
- CLOSEここから、どうしますか
AUTHOR反町 恭一郎
人材・組織開発コンサルタント / WORKARTS.llc
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OPEN ── こんな方へ
頑張っているのに、なぜか疲れる。
役に立っているはずなのに、満たされない。
みんな前に進んでいるのに、
自分だけ、まだ迷っている気がする。
昔はもっと、何かに夢中になれていた気がする。
今は、何をしていても、どこかうわの空。
いくつか診断を受けてきた。
でも、なぜか、自分の中で繋がらない。
「あなたの強み」と言われたものを見て、
ちょっと、しらけてしまったことがある。
心あたりがなければ、ここで閉じてください。
時間は、あなたの一番大切な資源です。
もしどこかに心が動いたなら、たぶん、あなたの本です。
反町 恭一郎(人材・組織開発コンサルタント / WORKARTS.llc)
この本は、MYTORIS(ミトリズ)はもちろん、それ以外も含めて、詳細な「診断ツール」という道具を、実際に使うかどうか 考えている方に、まず読んでもらえたらと思って書きました。ただし、すでに診断を受けた後の方にとっても、結果を読み直すための補助線として、役に立つはずです。
世の中には、自分を理解するための道具が、たくさんあります。性格診断、強み診断、キャリア論、コーチング。占い的なものから、科学的な根拠があるものまで。ざっくりしたものから、詳細なものまで。かなり幅広いツールが、いつでも手に入る時代です。
それなのに、自分を理解することは、かえって難しくなっている。そう感じている方も、多いと思います。私もそう感じています。
理由のひとつは、自己理解のために使われる言葉が、その解像度を上げるどころか、むしろ混乱を生み出しやすいことです。
「強み」「価値観」「やりたいこと」「パーパス」
自分探しを進めるほどに、新しい言葉や、「同じ言葉だけど違う意味の言葉」で頭の中がいっぱいになり、かえって混乱してしまう。そして、また次の診断に手を出すということを、繰り返してしまう——。
あるいは、診断によって「わかった気」になって、本当はあなたやチームに起きようとしていた変化が、起きないままになってしまうこともあります。
そこでこの本では、たとえば「強み」や「価値観」という言葉の "袋" の中に、ごちゃ混ぜに入っている概念を、いくつかに分けて並べ直してみます。それを一回覚えれば、「色眼鏡」 みたいになります。それをかけてみることで、「診断結果」はもちろん、「申告」や「評価」との向き合い方が、少しだけ変わる——そのきっかけになれば、と思っています。
CHAPTER 01
すぐに「解決」したら、
もったいない
そもそも、「診断を受けてみたい」という気持ちは、どこからきたのでしょうか。たぶん、それは、あなたの中の 違和感 や 好奇心 から、始まったはずです。
私って、どういう人なんだろう。何をしたいんだろう。何が、自分の強みなんだろう。そういう「問い」が、あなたの中にあったはずです。
ところが、いまはその引っかかりを、上手に消してくれる道具やサービスが増えています。
- タイプ診断のようなものを受けて、「やっぱり私って、そういう人だよね」と納得する。
- 診断結果をAIに貼り付けて、「どう読めばいいですか」と聞く。AIは親切に、構造的に、整理を返してくれる。
- コーチやカウンセラーに話してみる。丁寧に聞いてくれる人がたくさんいます。
もちろん、それらはすべて善意で、親切な支援です。でも、だからこそ——ときに、それはあなたに、「もったいないこと」 を起こしているかもしれません。
上に書いたようなことをすると、気持ちはスッキリしてきます。でも、その親切さや寄り添いの中で、まだ言葉になっていなかった「なんか違う」が、もっともらしい説明によって、解決されてしまうことがあります。
違和感は、あなたが何かを理解しようとしているサインです。それを無かったことにしてしまうのは、本末転倒——もったいないことです。
ひとつ、実際にあった話を
たとえば、こんな方がいました。佐藤さん、と呼びます。佐藤さんは、ある診断を受けて、こう言われました。
「警戒性が高く出ていますね。これは、未来のリスクに気づく力です。あなたの強み ですね」。
佐藤さんは、確かに自分にはそういう傾向があると感じました。実際、仕事の中で、人より早くリスクに気づいて、何度も役に立ってきた。だから、「そう言われると、そうかもしれない」とも思った。でも、同時に、こうもつぶやきました。
「私の強みって、私が好きなこと、とは違うのか」
「リスクに目がいって、状況を楽しめないこともあったから、あんまりいい気持ちではない」
このような「ギモン」や「違和感」が立ち上がってきたと言います。
もしそうではなくて、この時、佐藤さんが、「そっか、これが私の強みなんだ。まあ、そういうものか。がんばろう」と解決してしまっていたら、どうなっていたでしょうか。佐藤さんは、「警戒性」を「強み」として、これからも使い続けることになる。そして、いままで通り、やるほどに消耗していくことになる。
——でも、佐藤さんは、「解決」する前に、立ち止まりました。この「うーん」、何が起きていたのでしょうか。
佐藤さんに「うーん」が起きた理由について、ここから話してみます。それでわかったのは、「強み」という言葉が、解像度の荒い袋 になっていることです。その袋の中に、本当は別々に扱うべきものが、いくつも混ざって入っているのです。
たとえば、「あなたの強みは、警戒性です」と言われたとき。その一語の中には——次のものが、ぜんぶ入っています。
図1:「強み」という一語の袋に、混ざって入っているもの
これだけのものが、「強み」というひとつの袋に入っています。だから、佐藤さんが「強みって、好きなこととは違うんだね」とつぶやいたのは、自然なことでした。
傾向としてはある(特性)。やれている(能力)。誰かが助かっている(需要)。でも、「好き」かと言われると違うし、自分で「選んだ」かと言われると、そうでもない——。
このズレは、「あなたの強みは警戒性です」という解像度の荒い言葉では、見えてきません。「強みです」と言われた瞬間に、ズレは塗りつぶされてしまう のです。
だから、私たちには、これを見分けるための「レンズ」が必要です。ひとつの "袋" に混ざって入っているものを、いくつかに分けて見るための、六つの言葉です。それは、自分をもっと解像度高く理解する手がかり になります。
これらは、自分を理解するときの、六つの別々のレイヤーです。混ざりやすいですが、混ぜずに、一つずつ見ていきます。
特性 / 能力 / 好き / 使命 / 需要 / 選択
一特性characteristics
あなたが今、現時点で備えている素質のことです。先天的・後天的に持っている傾向、気質、と言えます。
診断ツールには、いろんな種類があります。特性だけを丁寧に映そうとするもの。強みと呼んで、特性と能力を一緒に扱うもの。使命や天職まで指し示そうとするもの。種類によって、映している層が違うのです。だからこそ、診断結果を判定や判決として受け取るのではなく、「データの上ではこう見えますが、あなた自身は、どう感じますか?」 という問いかけを忘れないようにしてください。
二能力ability / can
特性から育って、実際に使える力・機能のことです。「得意なこと」とも言えます。警戒性が高いという特性から、リスクを察知する能力が育つことがある。観察するのが好きだという特性から、人の話を聞き出す能力が育つこともある。
特性は与えられるものですが、能力を育てるか、寝かせるかは、ある程度、自分で選べます。
三好きwant
身体がついやってしまう、そのものが報酬となる行為のことです。結果が出なくても、褒められなくても、あるいは「ダメ」と言われても、ついやってしまう行動です。
頭で「これは大事」と思っていることと、身体が「これをやっていたい」と感じることは、ずれることがあります。得意だけれど好きではないことを、毎日続けると、あなたは消耗します。
四使命calling
これはあなたが成さねばならない、と感じている感覚のことです。頭で組み立てるものではありません。気づくと呼ばれている。気にかかって、見過ごせない、応えなくてはと感じてしまう。そういう、"向こう" からやってくる引力や、人生からの電話 のようなものです。
五需要demand
あなた以外の誰かの、願いや悩み事のことです。需要だけは、あなたの外側からやってきます。その需要に応えると、あなたは何かしらの価値を提供したことになり、人から感謝されたり、承認されたりします。
六選択choice / will
ここまでの五つを、自分でどう選ぶか、です。特性は、あなたに備わったもの。好きは、身体反応からやってきます。使命は、思わぬ出会いからやってきます。需要は、外側からやってきます。
——つまり、私たちは、自分について、必ずしも選べることばかりでは、ないのです。自分で動かせる範囲は、実は、思ったよりも狭い。でも、その狭い範囲に、選択というレイヤーがあります。「これは自分で選んだ」と言える状態にしておくこと。 それが、この層の仕事です。
六つの言葉の、関係
図2:特性が内側、需要が外側。その間に能力・好き・使命があり、選択がこれらを編む
特性が内側にあり、需要が外側にある。その間に、能力・好き・使命がある。そして選択が、これらを編む。この六つは、混ぜずに、別々に見ていきます。 一覧にすると、こうなります。
| 言葉 | 意味 |
| 特性characteristics | あなたが今、備えている素質 |
| 能力ability | 特性から育って、実際に使える力・機能 |
| 好きwant | 身体がついやってしまう、それ自体が報酬となる行為 |
| 使命calling | 気づくと向こうから呼ばれている、成さねばならない感覚 |
| 需要demand | 誰かの、願いや悩み事 |
| 選択will | あなたが何をどう選び、引き受けるかについての意思決定 |
次の章で、さっそく、この眼鏡をかけてみます。
CHAPTER 04
さっきの佐藤さんを、
この眼鏡で見ると
それでは、第①章で出てきた佐藤さんを、この六つの言葉で見直してみます。佐藤さんが診断で言われたのは、「警戒性が高い、それはリスクに気づく力、あなたの強みです」。そして、佐藤さんはこう感じていました。「強みって、好きなこととは違うんだね」「人のために消耗してきたから、あんまりいい印象がない」。
これを、六つの言葉に分けて、並べ直してみます。
特性:懸念性・警戒性が、確かに高い
能力:それを使った先回りやリスク察知が、実際にできている
好き:……空白かもしれない(やっていて消耗する、ということは、身体は喜んでいなさそう)
使命:……空白かもしれない(世界からの呼びかけに応えている、という実感はまだない)
需要:周囲がそれを求めている(だから能力として、つい立ち上がってしまう)
選択:未発動(特性が、需要にはまっている。でも、積極的に選んだ気持ちはない)
こうやって並べてみると、見えてくるのではないでしょうか。佐藤さんの中では、特性・能力・需要が、まっすぐつながっていた。
警戒性という傾向があり(特性)、それを使ったリスク察知が実際にできていて(能力)、周囲もそれを求めていた(需要)。三つは、しっかりつながって動いていました。でも、彼は、その横にあるはずの「好き」「使命」「選択」が、空白のままだと感じました。
つまり、佐藤さんが感じていた「なんか違う」は、「自分はおかしい」ではなく、この 「余白が埋まっていない」という気づき だったのです。
この余白は、これからの可能性です。
それをせっかく見つけたのに、なかったことにしたら——「強みです」という言葉で「解決」してしまっていたら、これは惜しいことですね。特性は使われ続け、能力はもっと育ち、需要にはもっと応え続け、さらに消耗していったかもしれません。でも、佐藤さんは、「うーん」とギモンや違和感を持つことができました。
自分の中にある余白に気づくこと。それが、最初の一歩です。その余白を、すぐに埋めようとする必要はありません。それがあることに気づく。それだけで、診断結果の読み方は、ずいぶん変わるはずです。
一段引いてみると:「特性と需要だけで、動いていませんか?」
佐藤さんのケースを、もう一段引いて、抽象化するとこのような感じです。
図3:特性と需要だけがつながり、好き・使命・選択が空白のままの「消耗の構造」
これは、佐藤さん一人の話ではありません。このパターンに、心当たりがある方は、たくさんいると思います。「特性と需要だけで、動いていませんか?」 ——これは、自分にも問いかけてみる価値のある問いです。
ここまでみえてくると、「特性」を「強み」と勘違いして、「もっと使いましょう」とだけいうことの危険性も見えてくるはずです。それはさらに消耗を促すことになるかもしれないからです。そういうときに必要なのは、「もっと使う」ことではなく、たぶん、こういう問いです。
「これは、私が選んだかな?(choice / will)」
「強み」や「価値観」で、一括りにされた言葉を見た時は、一度この「メガネの問い」をかけてみてください。そのうえで、それでも続けると決めれば、続ければいい。その時、それは 選択 になります。
CHAPTER 05
これ、自分の特性だな。
でも、「好き」かな?
もう一つの問いを、シェアさせてください。
「これは、私の好きな行動かな?(want)」
何かの「診断」結果を見たとき、「強み」と言われたものを見たとき、誰かに「あなたはこういう人だね」と言われたとき、ぜひ、ご自身に問いかけてみてください。好き(want)は、先ほど書いた通り、「身体がついやってしまう、そのものが報酬となる行為」のことです。結果が出なくても、褒められなくても、あるいは「ダメ」と言われても、ついやってしまう行動です。
まず、「好き」と「特性」がズレていても、何もおかしくない
もちろん、特性 が 好き と一致しているなら、それは恵まれた状態です。これはあなたに「努力と思わない努力」を可能にさせ、能力が高まります。でも、一致していないなら、それは何もおかしくありません。
ただ、そのズレに気づいているかどうか が、その後を分けます。ズレに気づかないまま、特性を使い続けると、能力としてはどんどん上がるのに、どんどん疲弊していきます。ズレに気づくと、選択の余地が生まれます。「このまま使い続けるか」「使い方を変えるか」「一度離れるか」。気づいた瞬間から、それはあなたの選択になります。
「好き」を探る
では、「好き」はどのように探るのか。サインは、身体に出ます。頭は、いくらでも嘘をつけます。「これは自分の強みのはずだから、好きであるはずだ」と。でも、身体は、知っています。
「好き」のサイン
- やめろと言われても、ついやってしまう
- 時間を忘れる
- やった後に、消耗ではなく、満たされた感じが残る
- 誰かに見せたくなる、話したくなる
「好きじゃない」のサイン
- やる前に、気が重い
- やっている最中、急いで終わらせたくなる
- やった後に、消耗が残る
- それを思い出すと、ため息が出る
以下は、あなたの好き(want)を探るための問いです。これらの問いは、頭だけで答えてはいけません。身体反応 を思い出して、探ってください。
- 人生の各ステージで、お世話になったり尊敬している『大切な人』は誰ですか?
- その大切な人たちから、繰り返し注意されたり、アドバイスされたりしたことは何ですか?
- 「やってはダメ」と言われたり、怒られたりしても、ついやってしまっていたことは何ですか?
- 相手が納得しないとわかっていても、なぜその行動をとってしまったのでしょうか?その裏には自分のどんな欲求がありましたか?
- 昔から何度も直そうとしたけれど、結局直らなかった(評価されなくてもやってしまう)行動は何ですか?
- 『仕事だから』やっていることをすべて手放したとしたら、あなたの中に何が残りますか?
こうして自分の反応を思い出すこと/観察すること、そしてそのパターン(繰り返し現れる行動)を知ること、つまり、ある種の統計処理が役に立ちます。
ここまで、特性・能力・好き・需要・選択——五つの言葉を見てきました。これだけでも、診断結果を読み解くには、十分です。ただ、六つ目の言葉が残っています。使命 です。これは、慎重に扱いたい言葉です。なぜなら、使命も、頭で考えて作るもの ではないからです。
急いで言葉にしようとすると
「では、自分の使命は何だろう」と問いたくなるかもしれません。その問いが、なんだかかっこいい、華やかな問いに感じるように仕向けられていることがあります。でも、ここは、急がないでください。
急いで言葉にしようとすると、たいてい、頭が組み立てた、それらしい答えになります。社会的に望ましく見えて、語ったときに頷いてもらえそうです。でも、本当に「呼ばれているもの(Calling)」は、もう少し、扱いにくくて、説明しにくいものです。
経験も、ぶつかった出来事も、揺れも、まだ自分の中に積もっていないのに、頭で「私の使命は〇〇です」と組み立てて、それを自分に言い聞かせる。表面的にはキラキラして見えるし、SNSや面接でも語れる。でも、実はピンときてない。これは、誰かを傷つけることでは、ありません。ただ、あなたが、苦しいだけ です。
使命は、後から立ち上がる
本当の使命は、別の場所から立ち上がってきます。生きていて、ぶつかって、揺れて、人生の旅をして、それでも気にかかってしまう何か——そういうものが、何年もかけて、社会に対する違和感やギモンが「ちりつも」になることもあれば、突然のライフイベント、たとえば、病気や事故などで急に「降りてくる」人もいます。「これは、あなたが成さねばならない」と。
だから、今、使命が空白でも、何もおかしくないし、何も焦る必要もありません。特性・能力・好き・需要・選択を、丁寧に見続けていれば、いつか、ふっと、立ち上がってきます。来なくても、それで構いません。使命がないと生きていけない、というわけでも、ないのです。それまでは、五つの言葉で十分 です。
むしろ、「使命感に燃える」という言葉がありますが、実際に、それが「幸せか」というと疑問なことすらあります。でも、人生から電話がかかってきたら、その時が始まりです。
CHAPTER 07
自分一人では、
届かないところがある
ここまでの「色眼鏡」をうまく使えば、より豊かに診断結果を読み解いていくことができるはずです。ただ、最後にひとつだけ、付け加えておきたいことがあります。
自分一人では、届かないところが、あります。
人間の認識は、思っているよりも、自分にとって都合のよい方向に歪みます。これは、能力の問題ではなく、誰にとってもそうです。私もそうです。
「これは、自分の好きじゃないかも」と気づきかけても、頭は上手に説明をつけて、その気づきをなかったことにします。「特性と需要だけで動いていたかも」と気づきかけても、また忙しい日々に戻ると、そのパターンはそのまま続いていきます。自分一人で見ようとすると、見えないところが、必ず残ります。
だから、自分一人では届かないところには、外側からの「目」が、要ります。たとえば、信頼できる人と話し、身体の反応を観察してもらい、言葉と行動のずれを映し返してもらう。そうすると、勝手に起きていた「反応」を、自分の「選択」として引き受け直すことができます。
あるいは、診断結果を、一緒に読んでみる。自分一人で読んだ時には見えなかったものが、誰かの言葉によって、ふっと立ち上がることがあります。
この本を含めて、診断結果も、誰かの解説も、AIの説明も、すべては補助線です。判定するためのものでも、処方箋を出すためのものでもありません。最後の選択は、いつも、あなたにあります。
選択は、いつでもやり直せる
選択する、というのは、特別な意志力がある人だけのものでは、ありません。誰でも、今この瞬間に、できることです。そして、選択は、いつでもやり直せます。
今日、特性と需要だけで動いていた自分に気づいたなら、明日、少しだけ、好きの方向に動いてみる。あるいは、しばらくは今のままで行く、と選ぶ。どちらも、選択です。
応える、ということ
選択をし続けていると、ある日、気づきます。
自分が、自分の人生に応えている、という感覚。
特性を引き受け、能力を育て、好きに向かい、誰かの願いと出会い、そして、それらを自分の選択で編んでいる。それは、誰かに与えられた人生ではなく、自分が応えている人生です。それが、この本がいちばん渡したかったものです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。この本は、答えを渡すためではなく、自分との対話を始めるための、いくつかの言葉と問いを共有しました。ここから、進む道は、あなたが選んでください。
ひとつは、診断のような道具を、実際に使ってみる道です。診断は、特性という層に外側から鏡を当てる装置として、使えます。受けたあとも、最後の選択は、いつもあなたに残ります。
もうひとつは、この本の「色眼鏡」を持って日常の中で自分に問い続ける道です。診断を受けなくても、この六つで読み解けるものは、たくさんあります。
そして、もうひとつ。しばらく寝かせて、また開いてみる、という道もあります。今日の自分には響かなかったけれど、来年の自分には何かを返してくれるかもしれない。
私自身が、いちばん勧めたい道
ここまで「最後の選択は、あなたにあります」と書いてきましたが、ここは私自身の意見として、お伝えします。私がいちばん勧めたいのは、信頼できる伴走者と一緒に、読み解く道 です。
第⑦章で書いた通り、自分一人で見えるものには限界があります。診断結果も、自分の違和感も、一人で抱えていると、認知バイアスや忙しさの中で、ぼんやり消えていきがちです。横に、判定をしない、処方箋を出さない、ただ「あなたはどう感じる?」と返してくれる人がいると、見えなかったものが、ふっと立ち上がります。これは、私が現場で何度も見てきたことです。
その伴走者は、コーチでも、信頼できる友人でも、構いません。あなたの近くにそういう人がいれば、ぜひその人と、この本や、診断結果を、一緒に読んでみてください。もし近くにいなければ——私たちの活動も、選択肢のひとつとして、覚えておいていただけたら嬉しいです。(詳しくは、次のページで触れます。)
どの道を選んでも、構いません。それから、もう一つ。誰かの顔が浮かんだら、その人にも、渡してみてください。診断に向かう人にも、向かわない人にも、この六つの言葉は、何かしらの補助線になるはずです。
それでは、また、どこかで。
反町 恭一郎
INFORMATION / お知らせ
WORKARTS のプログラムについて
ここから先は、お知らせのページです。冊子本体とは温度が違います。必要な方だけ、お読みください。
WORKARTS では、この冊子で渡した「六つの言葉」を、実際に自分や組織の中で使っていくための、いくつかのプログラムを提供しています。すべてのプログラムに共通する設計思想は、ひとつです。
診断を、単独では使わない。必ず、対話とセットにする。
診断結果は、判定や処方箋ではなく、対話の素材 として使います。データの上ではこう見えますが、あなた自身はどう感じますか——そう問いかけ合うパートナーとして、サポーターやコーチが、隣に立ちます。
主なプログラム
PROGRAM 01
個人向け:診断+サポーターセッション
MYTORIS(自分とチームのトリセツ)といった診断ツールを受けていただき、認定サポーターと1対1で、結果を一緒に読み解いていきます。
- 自分の特性・能力・好き・需要・選択を、対話の中で整理する
- 「これは、私が選んだか?」「これは、私の好きか?」を、伴走者と一緒に問う
- 自分一人では見えなかった、空白や余白に気づく
判定はしません。処方箋も出しません。あなたが最後の選択をするのを、隣にいる役割です。
PROGRAM 02
チーム向け:チーム診断+対話セッション
チームメンバー全員が診断を受け、それぞれの「トリセツ」を持ち寄って、チームとしての対話を進めます。
- それぞれが何に呼ばれ、何を消耗しているのかが、見えるようになる
- チームの中の役割が、特性と需要の自動応答になっていないかを、点検する
- お互いの違いを、判定ではなく、リソースとして扱えるようになる
PROGRAM 03
組織向け:組織開発コンサルティング
組織全体の文脈に、この考え方を組み込みます。1on1の設計、評価制度の見直し、リーダー育成、文化づくり。診断やサーベイを、組織の管理装置ではなく、メンバーが自分自身に応答するための道具として、再設計していきます。
PROGRAM 04
サポーター養成プログラム
「判定しない、処方箋を出さない、ただ問いを返す」——そういう関わり方を、実践として身につけたい方に。コーチング経験がある方、対話の場づくりに関心のある方、Art of Hostingの実践者の方、組織開発の現場にいる方、いろんな入り口があります。
どんな方に向いているか
- 診断結果を、一人で抱え込まずに、誰かと一緒に読み解きたい方
- 「強み」「価値観」「やりたいこと」という言葉に、もやもやを感じている方
- 自分のチームや組織の中で、判定ではなく対話を、増やしていきたい方
- 「在り方が場を作る」という考え方に、共感する方
もう少し奥の話
この冊子の背後にある考え方——応答能力、コーリング、認知科学、それに関わる哲学——について、もう少し詳しく知りたい方には、別の文章『六つの言葉の、もう少し奥』をご用意しています。冊子本体よりも踏み込んだ、書き手のスタンスを開示した、いわば 隠れた三冊目 です。
反町 恭一郎 / WORKARTS.llc